秀岳館高校の人工芝グラウンドで行われた、
全国高校サッカー選手権熊本県大会4回戦。
ルーテル学院と熊本農業の対戦が始まります。
昨年度は準決勝で秀岳館に敗れたルーテル。
今年は夏の総体はベスト8。県リーグ1部でも
結果が出ず苦しんでいますが、粘り強く戦う
姿が印象的なチームです。
対する熊農。昨年の選手権は大津に敗れて
ベスト8で敗退。県2部で戦っていますが、総体では
秀岳館を破ってベスト8に進出。
八代市内の郊外にあるグラウンドには両校の選手の
保護者、生徒、卒業生が詰めかけ、声援を送る中、
14時40分、キックオフの笛が鳴らされます。
立ち上がり、ファーストシュートは熊農。
すぐにルーテルもシュートまで持っていきます。
さらにシュートまで持っていく両者。
早くもルーテルの7番東くん(2年)にはイエロー。
やや押し気味にルーテルが試合を進め、
連続でCKを獲得していた前半15分ごろ、
熊農、右サイドからクロス。
中で一人が潰れ、左から走り込んでいた6番がフリーに。
熊農が先制点を挙げます。
ルーテルはボランチの10番今吉くん(3年)、
6番江崎くん(1年)を中心とした展開から
ゴールに迫ろうとするものの、熊農はその
ダブルボランチにしつこくプレッシャーをかけ続け、
中盤で奪ったボールを素早く前へ。
ショートカウンターでゴール前へ迫りますが、
ルーテル守備陣は2番徳永くん(3年)らが体を張り防戦。
前半はこのままゴールは生まれず、
熊農が1-0とリードして折り返します。
後半、熊農のプレッシャーがどこまで続くか。
メモを取る手を止め、ピッチで走り続ける22人を見つめ続けていました。
早めの選手交代で立て直しを図るルーテル。
足を止めず、ルーテルの反撃を阻み続ける熊農。
声を涸らすベンチ外の応援部員。生徒。保護者。
祈りの表情でピッチを見つめるベンチメンバー。
10月の西日に照らされたピッチは、緊迫感に満ちていました。
刻々と過ぎ去っていく時間。
熊農の足は止まりかけ、ルーテルは徳永くんを前線に上げてパワープレー態勢に。
徳永君は長身を生かして競り合いに勝ち続け、9番上江くん(3年)、11番馬場くん(3年)の
2トップに繋ぎ続けます。
熊農ゴールに迫るルーテル。熊農守備陣は必死に体を張りづづける。
掲示されたアディショナルタイムは4分。
一つ一つのプレーに上がる悲鳴に近い声援。
サイドでキープし、隙あらばゴール前に攻め込む熊農。
コーナーでキープさせず、前線にボールを送り込むルーテル。
いつ主審の笛が鳴るか分からない中で続くギリギリの状況のなか、
きちんとボールをコントロールして最善を尽くす選手たち。
どっちも勝たせてやりたい。
馬場くんのシュートが枠を外れる。
観客席のため息に覚悟の色が混じる。
ゴールキック。主審の笛はまだ鳴らない。
セカンドボールを拾ったルーテル。
高いボールを競った徳永くんが前へすらす。
裏へ走り込んだのは背番号11。
次の瞬間。
ルーテルを応援するすべての人が絶叫した。
10分ハーフの延長戦。
勝利を目前でもぎ取られた熊農。
俄然勢いを増すルーテルの攻撃を押し返し、
隙あらばカウンターを狙い、前半の10分を凌ぎます。
延長後半。
誰もが声を涸らすなか、背番号9の左足から放たれたシュートが、
熊農のゴールに吸い込まれ、
ふたたび爆発するえんじ色の歓喜。
残りの5分をしのぎ切り、
ルーテル学院がベスト8の切符を勝ち取りました。
総体に続き、土俵際から生還してみせたルーテル。
ミスも少なく、最後まで戦い抜いた熊農。
素晴らしい戦い。心に刻みたい戦いが、またひとつ増えました。
おめでとう。
ありがとう。