樹々も色づいてきた11月の山口。
維新公園陸上競技場は賑わいを見せていた。
明治安田生命J3第36節、レノファ山口vs藤枝MYFC。
レノファ山口はJ3加入初年度から大量得点を重ねリーグを席巻。
J2ライセンスを獲得して、J2加入を確実視されていたが、
第3クールに入るとチームの勝ち点が伸びなくなり、
2位のFC町田ゼルビアが猛烈に追い上げてきた。
先に試合を終えている町田に勝ち点で並ばれたレノファ。
11位に沈む藤枝を相手に、是が非でも勝利が欲しい一戦となる。
スタグルを食べてエネルギー補充。
半年ぶりの維新公園。見渡してみると、ゴール裏は芝生エリアまでいっぱいになり、
メインのホーム側もいっぱいの声援。バックスタンドもずいぶん観客が増えている。
素晴らしい雰囲気のなかでキックオフの笛が鳴る。
テンポよくパスを繋ぎ、ゴールに迫るは藤枝。
ボールホルダーへの寄せが早く、奪い取ったボールは少ないタッチで回し
レノファにリズムを作らせない。
あれ?レノファどうしたの?と思っている間に
藤枝の9番大石が簡単に中に侵入。
スルーパスを受けてあっさりと先制のゴールを挙げる。
レノファはボールを持ってもタッチ数をかけさせられ、
パスコースが作れずにサイドからドリブルで仕掛けては絡めとられ、
奪われては無茶な寄せでファウルを取られ、決定機すら作れずに前半を終える。
ハーフタイム。
これはまずい、ひどいという声が聞こえてくる。
プレッシャーなのか、
欠場している44番庄司の影響なのか。
ここを乗り越えてこそ、
J2の温かく、過酷な世界へと這い上がることはできない。
6700人近く入ったサポーターの声援に向かってレノファの反撃が始まる。
しかし、レノファのリズムも改善されないがそれ以上に
藤枝の展開するサッカーが素晴らしい。
レノファのパスコースを寸断し、テンポよくゴールに迫る藤枝。
なぜ11位に沈んでいるんだ。
60分、64分とゴールを陥れられ、0-3。
一瞬スタジアムが静まり返る。
すぐに声援が大きくなる。
取り返そうと選手たちは前へ前へと進み続ける。
ゴールが揺れたのは86分。
右SBの小池が駆け上がり右足を振りぬく。
0-3からの大逆転を信じヒートアップするサポーター。
4分が掲示されたアディショナルタイム。
ペナルティエリアで抜け出した岸田がGKに倒される。
GKは一発レッド。控えGKの準備に手間取り少し時間が空いて迎えたPKを
J3得点王の岸田がきっちり決めて2-3。
時すでに90+5分。
ミラクルには届かず、試合終了の笛が鳴った。
3-2で藤枝の勝利。
テンポの良いパス回しと素早い寄せでレノファのパスコースを消し、
リズムを完全に狂わせた。お見事でした。
快進撃を見せていた頃とは違う姿を見せてしまったレノファ。
しかし絶望的な状況から何とかしようとする姿は見せた。
サポーターは拍手と声援で選手たちを迎えた。
夕日に照らされる人々の姿。
毎試合後行われる出待ち。選手たちが出てきたら子供たちは口々に
「サインください」と一生懸命に呼びかける。選手たちはサインに、
写真撮影に気さくに応じ、会話をかわす。
レノファを初めて見た日と変わらない光景。カテゴリーが変わっても、
たとえ負け続ける日が続いたとしても、無くなって欲しくない光景。
選手たちは山口という土地の、子供たちのヒーローで、
山口にレノファがある限り、きっと続いていくだろうと感じた。
入場無料、初のナイトゲームに集まった3700人の観衆と、
宿敵を打ち倒して示して大きな可能性を感じたあの日から、わずか2年。
確実にレノファのオレンジは山口の街を鮮やかに彩っている。
もうひとつ上のステージで、さらに強烈な個性を持つJ2の猛者と
しのぎを削り合うレノファが見たい。
この後2試合を戦い、1勝1分けで最終節を迎える。
2位町田との勝ち点差は0。
アウェイ鳥取に乗り込むレノファの選手とサポーターたちが、
最高の結果を掴み取ることを願っている。