マリヤンプシュニクという監督のもとで戦った2年間。
成績は1年目が14位、
2年目が16位。
ともにシーズン半ばまではプレーオフ圏内を
狙える位置にいながら、失速した。
成績だけを見て取れば、2年目の途中で解任されて然るべき。
そもそも2年目のチャンスが与えられていたかどうか。
なぜだろう。そんな成績の監督が愛されたのは。
なぜだろう。そんなにマリヤンを愛したのは。
2013年のはじめ、
惨憺たるチームにやってきた銀髪のスロベニア人は、
これまでの「プロクラブの監督」のイメージを覆し、
自らサポーターに近づいていき、選手たちの目の色を変え、
城後寿の、映画のようなヘッドで勝ったヴェルディ戦と、
金久保順の、鮮やかな軌道のシュートで勝った山形戦の。
その2試合で、荒みきったサポーターの心を鷲掴みにした。
大袈裟な言葉かもしれないが、救いだった。
日本の常識に囚われない、試合中のアグレッシブな姿勢や、
雁ノ巣で見せる、紳士的かつ、ユーモラスな一面は、
接する人を虜にしていった。
金森や三島といった若手を年代別代表にまで引き上げ、
福岡で育った若者には、福岡に戦う場所があると、
強烈なメッセージを発した。
一方で、試合中の頑迷な采配は、
本当に勝てるのかという不安を何度も脳裏に抱かせたが、
勝利の後の1,2,3アビスパのあとは、
この人とJ1に上がりたいと思い
スカパーオンデマンドの画面を閉じた日々。
瑕疵は、チームを維持できなかったことに他ならない。
経営危機のあとの歪な編成の中にあって、
プレーオフを狙える
戦いが出来たことは見事だったが、
北九州戦でチームは燃え尽きてしまった。
一番ダメなのは選手だと思っているが、
選手だけの問題とも思えない。
では、功績は何だろう。
金久保、石津、武田と、J1に選手を輩出したこと?
金森、三島、中原といった若手の才能を引き出したこと?
城後寿の、リーダーとしての可能性を耕したこと?
サポーターの、クラブへのロイヤリティを高めたこと?
思うに、一番の功績は、経営危機に襲われた際に見せた、
真っ向から立ち向かってくれた、その姿勢。
「今こそ、福岡の町が団結するときなのです。
私たちに5本、7本の指は必要ありません。
我々に必要なのは拳なのです。
ばらばらの指ではなく、固く握られた拳なのです。」
その言葉は、5000万の運転資金ショートという
絶望的な状況を知らされた心に、
熱いマグマのような温度を持って入ってきた。
アビスパをつぶすわけにはいかない。
できることをやろう。
アビスパというクラブが存続することのできた、
恩人のひとり。
そのことは絶対に絶対に、忘れてはいけない。
明日から始まる、新監督との日々。
前監督との時間は過ぎ去り、思い出となり、いつかは
薄れていくのかもしれない。
ただ、覚えておきたい。
クラブのエンブレムを、
クラブの色を、堂々と示す勇気を与えてくれた存在を。
地域にプロクラブがあることの意味を、
示し、考えさせてくれた姿を。
プロ意識とは何なのか、
「サポーター」が果たす役割は何なのか?
大きな力に全てを委ねずに、
ファン、サポーターという枠を超えて、
スタジアムに人を呼び込むためには何をすればいいのか?
時間はかかるかもしれないが、答えを探したい。
Hvala(ありがとう)、マリヤン。
あなたの残してくれた宿題の回答を、
いつの日か見せに行きたい。
アビスパ福岡というクラブが、
福岡という街の極上の彩りになったそのときに。
満員に膨れ上がったレベスタを、マリヤンにお見せしたい。
そのとききっと、サポーターはこう歌っている。
紺色の 高野アビスパ
見せてやれ 博多の男
未来を現実にするために。
ともに戦おう未来へ。